「遺影写真がない…」と慌てないために|葬祭ディレクターに聞いた「写真を残す」終活のすすめ

「遺影写真って、準備しておくものなんですか?」
これは、お葬式の現場でよく聞かれる質問です。

実は、葬祭ディレクターの方とお話しするなかで、「遺影写真がなくて困るご家族が非常に多い」という現実を知りました。
特に高齢の男性の場合、日常的に写真を撮る機会が少なく、いざというときにそれらしい写真が見つからないことが多いそうです。
お葬式の準備では、限られた時間の中で多くの判断が求められます。
そのなかでも「遺影写真」は、故人の顔として最後に残る大切なものです。
この記事では、住職としての視点と現場の声をもとに、「遺影写真の準備」についてやさしく解説します。

この記事の結論として、終活の一歩に家族写真を撮ることをご提案します。
- 遺影写真に関して、お葬式の現場で実際によく起こる課題
- 準備されていないことで、どんな困りごとが起こるのか
- 家族写真を撮ることが、終活になる理由
- 今日からできる小さな行動のすすめ

この記事が、少しでも皆さんの参考になると嬉しいです。
遺影写真が準備されていないと起こりがちな3つの困りごと
- 遺影写真をどれにするか、お葬式直前にバタバタする
- 顔がぼやけている、表情が暗いなどで違和感が出る
- 遺族間で「この写真でいいの?」と意見が分かれて気まずくなる
遺影写真をどれにするか、お葬式直前にバタバタする
お葬式の日程が決まり、式場が決まり、喪主が挨拶の準備を始める…
そんな忙しいなかで、意外と決まらないのが「遺影写真」です。
葬祭ディレクターの方によると、「写真がなかなか見つからず、家族総出でスマホやアルバムをひっくり返すことも珍しくない」とのこと。
特に以下のような方が困りやすいそうです。
- 高齢の男性(写真を撮られることが少ない)
- スナップ写真しかない方(正面から写ったものが少ない)
- 集合写真の一部しか見つからない方
「写真はスマホにあると思っていたけど、見返してみると集合写真ばかりで…」
「昔のスナップ写真を引き伸ばしたけど、ぼやけていて…」
こうした声は決して珍しくありません。
特に男性の場合、日常的に写真を撮る機会が少なく、遺影にふさわしい写真がないというケースが非常に多いです。
顔がぼやけている、表情が暗いなどで違和感が出る
写真をスキャンして遺影写真にすることが一般的でした。
しかし、ぼやけた写真や、他人と並んだ写真を無理に加工すると、こんなことが起こります。
- 顔がぼんやりして不自然
- 表情が硬い、または暗い印象
- 着せ替えた服装が浮いてしまう(技術が進んでも、元画像によって限界がある)
こうした遺影写真では、その人らしさが伝わりにくくなることがあります。

残るものなので、鮮明な写真のほうが良いですよね
写真を見るたびに、後悔することがある
ぼやけた写真の合成など違和感を感じる写真を選んでしまうと後悔する場合があります。
実際の経験談として、以下のような話があります。
30年前の祖母の写真は、明らかに顔を他の体と合成した「着せ替え」の写真でした。それを見て、「ばあちゃん、なんか浮いてるじゃん」という感想を持ち、体と首があるだけのように見えました。
その写真が「昔ながらの」ものであったとしながらも、「これなぁ…」と思いながら毎回見ていました 。

このように、遺影写真はその場限りのものではなく、残された家族の心に長く残り続けるものです。
ふとしたときに目に入り、法事やお盆、仏壇に手を合わせるたびに見つめる「顔」になります。
だからこそ、「なんとなく選んだ写真」ではなく、「この写真でよかった」と思える一枚を用意しておけたら、残された家族にとっても、そして何より自分自身にとっても、きっと安心できるのではないでしょうか。
今は自然で美しい遺影写真が作れる時代に
技術の進歩によって、写真の加工や着せ替えは格段に進化しました。
- スマホのカメラ性能の向上(iPhone・Android)
- 写真編集ソフト(CanvaやAdobeなど)による自然な補正
- 着せ替え技術もリアルで違和感が少ない
とはいえ、もとになる写真が大切です。
最低限、以下のような写真があると安心です。
- 正面を向いている
- 笑顔ややわらかい表情
- 一人で写っていて、トリミングしやすい
- ピンボケしていないもの
遺影写真を事前に準備する3つのメリット
- お葬式の準備で家族が慌てずに済む
- 自分らしい笑顔の写真を残せる
- 残された家族に思い出を残せる
葬儀の準備で家族が慌てずに済む
突然のお別れの場面では、限られた時間の中で多くのことを決めなければなりません。
その中でも「遺影の写真探し」は、家族にとって大きなストレスになることがあります。
あらかじめ1枚でも「これを遺影写真に使っていい」と伝えておくことで、バタバタと探し回ることなく、準備をスムーズに進められることができます。
自分らしい笑顔の写真を残せる
事前に準備することで、納得のいく自分らしい写真を遺影として残すことができます。
旅先での笑顔、家族と過ごした穏やかな日常、そんな自然な一枚が、葬儀の場をやわらかく包み、見る人の心をあたたかくしてくれます。
「こんな顔で見送られたい」
そう思える一枚を、今のうちに選んでおくことが、自分にとっても安心になります。
残された家族の心にあたたかさを残せる
遺影は、お葬式が終わってからもずっと残る「その人の面影」です。
仏壇や法事、メモリアルコーナーで目にするたび、その笑顔が、家族の心にやさしい記憶を届けてくれます。
事前に用意された一枚の写真が、「この写真はね…」と語り継がれていく、話題の一つになります。
「遺影のための写真」ではなく「今を残す一枚」を
「じゃあ、写真スタジオで撮らなきゃいけないの?」
そう感じる方もいるかもしれません。
でも、もっとやさしい方法があります。
それがー
家族で写真を撮っておくこと。
何気ない旅行先でも、自宅のリビングでも構いません。
家族がそろったときに、写真を残すこと。
その中の一枚が、
「このとき、いい笑顔だったな」
「これを遺影にしてあげよう」
と思える写真になることも、よくあります。

さらにきれいな遺影写真にするには、一人の写真を正面から撮ることもおすすめします。
まとめ|家族写真を撮ることは、命を見つめるあたたかな終活
遺影写真は、お葬式だけで終わるものではありません。
- 法要
- 仏壇
- メモリアル
その人の「面影」として、長く家族の心に寄り添い続けます。
だからこそ、元気な今こそ、自分らしい一枚を残しておくこと。
それは「思い出を遺す」というだけでなく、「家族に安心を贈る」行動でもあるのです。
また、写真に残すということは、ただ記録するだけでなく、「今をちゃんと生きている」ということを実感する、身近な方法だと思います。
遺影の準備というと、どこか死後のためという寂しさを感じるかもしれません。
でも、家族と過ごす「今」を写真に残すことは、その一瞬を大切にしている証であり、未来の不安を減らす、あたたかく、前向きな行動ではないでしょうか。
やってみよう!今日からできる小さな一歩
- スマホの中から「この表情いいな」と思う写真を1枚選んで、保存しておく
- 家族で写真を撮る機会を意識的に作ってみる
- プロの写真館で、笑顔のポートレートを残すのも◎

遺影とは、故人の顔そのものではなく、「あの人らしさ」を思い出す灯のようなものです。